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建物の区分所有等に関する法律の概要Building division ownership law

1.建物区分所有法の概要


(1)民法ではだめなの?


 建物区分所有法(正式名称は,「建物の区分所有等に関する法律」といいます。)は,マンションのようにひとつの不動産を複数人が個別に所有し,かつ,通路などのみんなが使う部分を共有とする法律関係を調整するために作られた法律です。
 難しい言い方をしましたが,要は,ひとつの物をみんなで仲良く使う方法について定めた法律ということです。

 民法にも,共有に関する規定はあります。しかし,作られたのが明治時代なので,今のような高層マンションが建ち並ぶ状況を想定して制定されていませんでした。
 具体的には,民法は,建物区分所有法制定前においては,1箇条(民法旧208条)しかおいていませんでした。
 だから,高層マンションが建ち並ぶ現代において,建物区分所有法が必要となったのです。
 この点について,さらに詳しく説明しましょう。

(2)建物区分所有法制定までの経緯


@民法旧208条(現行削除)の規定

 建物区分所有法制定前は,一棟の建物の内部がいくつかに区切られて,それぞれが独立性をもち,そこに所有権が成立する場合に,その相互の関係につき,民法は旧208条の一箇条だけで規定していたことは先ほど説明しました。
 この規定は,主として棟割長屋(垂直に区分された一棟の建物)を想定して作られました。したがって,区切りをしている壁は共有であるといったような簡単な規定でした。

A建物区分所有等に関する法律の制定(昭和37年)

 建物区分所有法の成立は,第二次世界大戦の終了を待つ必要がありました。戦後の日本は,政治的な変革が一段落つくと,高度な経済成長を迎えることになりました。そして,都市部を中心にビルが林立する状況を生みます。
 そして,一棟の建物が水平的階層的に区分され,それぞれが所有権の対象となってきたし,また,マンションと称する共同・集合住宅ができ,一棟の建物が垂直にかつ水平に区切られ,一棟のなかで何十という世帯が共同で生活するようになりました。
 この法律関係をわずか一箇条で処理することは不可能でした。
 そこで,民法208条を削除し,それに代わって,「建物の区分所有等に関する法律」(昭和37年4月4日 法律第69号)を制定し,この新しい事態に対処するようにしました。
 ちなみに,昭和37年に制定された建物区分所有法はわずか37箇条で定められていました。その骨子は以下のようなものでした(現行法とは異なる部分が多くあるので注意)。
 @ 一棟の建物を「専有部分」と「共用部分」とに分けて,前者に対する所有権を「区分所有権」とし,後者は区分所有者の共有とした。
 A 区分所有者は,建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならないとした。
 B 共用部分について「変更」と「管理」についての規定を置き,「変更」は建物区分所有者全員の,「管理」は共有者の持分の過半数の決議でできるものとした。
 C 区分所有者は決議によって管理者を置くことができる旨を定めた。
 D 建物およびその敷地もしくは付属施設の管理・使用に関し,規約を作ることができる旨を定め,この規約の設定・変更・廃止は,区分所有者全員の書面による合意によらなければならないとした。
 E 集合の規定を置き,その議決権は,持分の割合(共用部分の持分の割合によるということで,それは専有部分の床面積の割合によって決まる)により,管理者または区分所有者の4分の1以上で議決権の4分の1以上を有する者は,集会を召集することができるものとした。


(3)建物区分所有法の改正


@昭和58年の改正

 昭和37年の法律制定から20年の間に,中高層建物は飛躍的に増大しました。具体的には,昭和37年当時に5000戸だった中高層建物が,昭和58年には130万戸に達しました。
 制定当時は時代を先読みした規定もあったのですが,時勢により多くの問題を抱えることとなった。主な問題は以下の通りです。
 第一に,登記簿が膨大となり,工事の一覧性を欠くようになった。建物は一棟ごとに作られるが,一棟の区分所有者の数が多くなるにつれ,一棟の登記簿が数冊にもなる結果を生じた。敷地は共有となることが多いが同じく登記簿は相当な数に及んでいた。
 第二に,共用部分の変更には,共有者全員の同意が要するものとし,さらに規約の設定・変更をするには区分所有者全員の書面による同意が必要であるとされていたため,建物を合理的に管理するのに難点があった。また,建替えをしたくても,これらの規定が大きな障害となる場面が多発した。
 第三に,区分所有者で組織される管理組合については,その性格が明瞭でないため,運営・権限等をめぐってしばしばトラブルが生じた。
 第四に,共同の利益に反したり,規約違反の行為に対して,取り得る措置が不十分であるため,秩序が保てないという事態が生じた。
 以上の問題点を解決するため,昭和58年に大きく改正されました。
 昭和58年の改正は,改正というより新法制定の趣きさえあった大きな改正でした。その要点は以下の通りです(現行法と多少異なる部分があるので注意)。
 @ 区分所有建物とその敷地の一体的な管理を図り,かつ,区分所有建物に関する登記の合理化を図るため,専有部分と敷地利用権とは,原則として,分離して処分することができないことなった(22条〜24条)。
 A 区分所有建物に関する管理を適正化するため,共用部分の変更および規約の設定・変更・廃止は,原則として区分所有者全員の合意によることとされているのを改め,集会の特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による決議)とした(17条・31条)。
 B 区分所有建物に関する管理の充実を図るため,区分所有者は,全員で,区分所有建物等の管理を行うための団体を構成することを明らかにするとともに,区分所有者の数が30人以上であるときは,その団体は特別決議に基づき法人となることができることとした(47条以下)。
 C 区分所有者の共同生活の維持を図るため,区分所有者が共同の利益に反する行為をした場合またはおのおそれがある場合には,他の区分所有者の全員または管理組合法人は,集会の決議に基づき訴えをもってその行為の差止めを請求し,あるいは,特別決議に基づく訴えをもってその者の専有部分の使用の禁止,または,その区分所有権および敷地利用権の競売を請求することができることとした(57条以下)。
 D 老朽化等により区分所有建物の建替えを相当とするに至った場合における区分所有者間の利害の合理的な調整を図るため,区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数による集会の決議に基づき建替えを実現することができることとするための措置を講ずることとした(62条)。
 E 不動産登記につき,専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができない場合,専有部分の登記用紙に敷地利用権の表示を登記することとした(旧不動産登記法91条2項4号)。

A平成14年改正

 昭和58年改正による規定も社会の変化に対応できず,さらなる改正を余儀なくさせる。
 従来の居住用マンション,業務用建物に加え,新たにワンルームマンション,リゾートマンション,超高層マンションなど多様な目的・形態の建物が登場しました。また,建築技術の発展も著しい。
 これらの多様な建物を管理していくためには,従来からの建物区分所有法では十分でないことがわかってきました。
 問題は,第一に管理のあり方です。特に定期修繕が容易に行えるよう改正することが求められました。第二に,建替えの要件です。築30年を超えるマンションが増加したことと,平成7年に起こった阪神・淡路大震災でのマンションの再生をめぐる問題が多発したことが,改正を後押しました。
 以下,さらに詳しく見て行きましょう。
【管理】
 @ 共用部分の変更でも,形状または効用の著しい変更を伴わないものについては集会の決議(区分所有者および議決権の過半数の賛成)でできるものとし(17条1項),この結果,大規模修繕のほとんどがこの決議で可能となり,決議が容易となった。
 A 管理者や管理組合法人に,共用部分などについて生じた損害賠償金・不当利得返還金の請求・受領につき代理権が与えられた(26条2項・47条6項)。この結果,共用部分などの瑕疵問題につき,管理者が売主との間で交渉や損害賠償の受領などができるようになった。
 B 規約は綜合的に考慮して区分所有者の利害の衡平がはかられるように定めるべしとする(30条2項)。等価交換マンションでの原始規約をめぐる問題での解決の糸口が与えられた。
 C 管理組合が法人格を取得する際の区分所有者30人以上という要件が撤廃された(47条1項)。
 D 集会での議決権行使や管理組合での文書作成に関して、IT化による電磁的方法による行使,電磁的記録による使用などについて整備した(30条5項・33条2項・39条3項・42条4項・45条4項など)。
 E 大規模滅失が生じた復旧決議が成立した場合,決議に賛成しない区分所有者の買取請求の相手方として買受指定者の制度を設けて所定の手続きの整備をした(61条5項8項)。
【建替え】
 @ 集会で区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数決のみで建替え決議ができるものとし,費用過分性,敷地同一性,使用目的の同一性などの要件を削除した(62条1項)。これに伴って,召集通知,通知事項,説明会開催の手続きなどを充実して周知徹底を図る方策を整備した(62条4項5項6項)。
 A 一団地のなかに数棟の建物があって敷地などを共有している団地建物につきその一棟が建て替えする場合(順次建替え),全部の建物を一括して建替えする場合(一括建替え)につき,団地内での立替えが容易にできるようにする規定が設けられた(69条以下)。


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